ベースベーカリーのブログ

2021年8月第4週

ディンケル・フォルコン

1週前が「ノア8コア」という色々と輝かしい麦だったので、期待をガクンと落とすわけには行かない。そんな気迫で挑んだ古代麦だけで焼くフォルコンです。

これまでも「古代麦」と呼ばれるカテゴリーの麦は何種類も使いながら様々な挑戦をしてきましたが、今回は今までで最も、パンになるかならないか、ギリギリを攻めた記憶に残るパン焼きとなりました。

【古代麦の未来】

東京都内約1000件のパン屋さんを調べたとしても、BIO古代麦100%というパンと出会える確立は限りなくゼロです。 つまりそれこそが世間の答えで「BIO古代麦=パンに使えない」という正直な評価です。現状そういう麦であることは痛いほど分かっているし、確かに扱いづくらくて、一言で言えば大変です。見た目は大きく膨らまず、小さく見えるけれど、値段は高価です。売れ残ったらキケンなので値引きすれば儲からない。普通のパンを普通に焼いていたほうが安全で利益率も高い。食べるべきメリットはたくさんあるけれど、パン屋が食材として選ぶデメリットは計り知れない、そんな大人の色々な理由。だけれども、使うべき色々な理由だっていくらでもある、そういう麦だけでパンを焼こうじゃないか。という「ディンケル・フォルコン」。

もっともっとお客さんにディンケルの色々な表情を体験してもらわないと、感想も評価も出るわけがなく「古代麦の未来」は見えてこないと思っています。「作る価値があるのか、買う価値があるのか、食べる価値があるのか」という問いの答えは、どこかのパン屋が提供し続けなければ出てこない。だから、ベースでは古代麦のパンを焼き続けるけれど「レシピ化しません」。色々な表情を、可能性を麦に翻弄されながら皆さんと体験しつつ、次も焼くかどうかを決めています。そして、早速連続で、来週もまた焼くことに決めました。今度は試験的に輸入した別ルートの個性が違うディンケルです。作り手にとっても初めて。そんな真剣な大人の遊びにお付き合いいただけるお客様のご来店を、心よりお待ちしております。

【加水率】

製パンでは「粉に対してどれくらいの割合で水を加えるか」という計算があり、パンの種類で全然ちがうのですが、ざっくり60%前後が標準でしょうか。よく水を吸って、グルテンが強くてダレにくい、真っ白い小麦粉に対しての水の割合です。

今回、正確な計算は出来ませんが水を吸いにくい石臼挽きBIO古代麦に対して、水を100%以上入れました。つまり、粉より水が多い生地と言う事です。とろみの強いポタージュのような生地作り、そのことがどれだけ無謀なことかは、パンを作る人には理解してもらえると思います。(なぜ入れたのかは理解してはもらえませんが。)でもあの手この手で生地に向かえば、今日のようなパンは焼けるという一つの可能性が見えました。極端な行動の結果、マトモな領域がぼんやりと見えてくるのなら、冒険路としては相応しいのかもしれません。

フィグノア

イチジクとクルミは長いことオーガニックを避けてきた食材でした。定期的にブラインド試食をして、どっちが美味しいかを比べ続けてきた2つの食材が、その順位を逆転させたのは今年に入ってからでした。また逆転して元にもどることもあるだろうけれど、今はオーガニックの方が美味しい。クルミはあまり砕かぬように大きくゴロゴロいれました。果肉の分厚い高品質なイチジクも、細かく刻まずひたすら手捏ねで仕上げました。(よいリハビリになりました)だから、スライスは厚めでお願いします。薄く切ると、せっかくのゴロゴロが細切れになり、食感が弱まります。また、スライスごとの具材バランスが悪化します。そんな理由で厚めがオススメです。

実はこのフィグノア、2つの分かれ道の岐路に立っているパンなのです。有機いちじく、有機クルミ、その価格は皆さんもご存知の通り、とても高価です。業務用の箱で買っても高級品には変わりなしです。それをゴロゴロ&ザクザク入れればパンの価格も当然上がるわけですが、一番の悩みどころはその具材の混ざり具合なのです。

生地に香りを乗せたいので、具材と一緒に熟成をとりました。その結果、一個一個のパンの中に含まれる胡桃の数とイチジクの数は「同じににならない」のです。分割しながら全個数を確認し、イチジクがすくない生地にはイチジクを足しながら成型したので、最終的には整っているはずですが、とんでもない時間がかかる。

頼もしい助っ人が居てくれたお陰で可能でしたが、発酵ラグも生じてしまうので改善するべき方法です。2つ目は均一に混ざるまでミキサーで捏ねる手法がありますが、せっかく高品質な大粒のいちじくは潰れてしまうし、ぴちぴちとした種の食感も鈍り、くるみもブロークン規格に劣化する。総じて食感はさっぱりして当たり障りのないボヤケたものになってしまう。

さて、どうするか。そういう禅問答の「フィグノア」です。価格についても「ショコラニブ」を超えるのでエイヤーと下げました。これは完全にパン屋側の課題です。ベースベーカリーの具材パンは日常的にバクバク食べる価格では無いと思っています。その事で思い悩んだのは何年も前のこと。今は整理がついて、過去より上の質を目指しています。とはいえ、作り手自身にとっても、もっと気軽に食べれる価格にならないか、と毎日考えています。答えは無理。本当の意味での「よいものやすく」がありえるとしたら、誰かからのの寄付か、誰かからの搾取の上にしか成り立ち得ません。とはいえ、考え続けている事でひらめくことはあるので、今夜も楽しく考えてみます。高価な具材を均等に全てのパンに混ざる為に、生地の中での熟成香を手放すべきか否か。手放さない良い方法とは?半分は練りこんで、半分は数えて入れる?

意外と作り手、いろいろ考えているんだな、と、どうか思ってください。

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