お休みを頂いておりましたが、ライ酵母のケアと自身のリハビリも兼ねて臨時営業させていただきました。石臼への麦運び、窯入れや窯出し作業もまだおぼつかないので、助っ人に支えられながらのパン焼きです。ご不便をお掛けいたしますが通常営業への復帰は、もうしばらくの間、お待ちくださいませ。
ロゲン = ライ麦100%のパン
材料不足で長いこと焼けなかったライ麦パンをようやく焼くことができました。コロナウィルスの影響で輸入もままならない状況下で、穀物商社さんが普段以上の心配と努力、ストレスに耐えながら入荷してくれた麦です。
そんな有り難い麦、それはこれまで見た事も無いほどの、最も質の悪い麦でした。気づかずに使っている人が多いでしょうし、食材の質を品評する場ではないので質の詳細は控えます。皆様に伝えたいことは、これからしばらくの間、ベースがお世話になるライ麦は例年と比べて極端に残念な品質だという事です。
なぜそんなことをわざわざ言うのか、そもそも言う必要があるのか、黙っている選択だってある。
でも、作り手がどんな材料を使っているのか、どんなストーリーの食材で、それをどんな気持ちで扱っているのかと言うことは、これまでもずーっと伝えてきた「あたりまえのこと」です。だから今回のライ麦も、「素晴らしいライ麦が届いた!」と言うのと同じ意図で、「すごく残念な品質です」と正直に告白します。伝えることがデメリットになるのか、それともメリットになるのか。そう考えた時、きっとベースのお客さんと自分自身にとってはメリットになると結論付けました。
伝えることのメリット
そう公言することで、お客さんはパンを食べながら「どこがどう悪いのか」を探そうとするかもしれません。別の言い方をすれば「アラサガシ」のような食べ方をしてくれるかもしれない。それこそが、伝えることのメリットだと考えました。それは本来、「楽しみ方」というべきものなのです。香りをかぎながら、食感を確かめるようにして咀嚼し、口の中に広がる世界を出来る限り感じようとする行為。それはレストランでの普通であり、ワインでの日常であり、初めて食べる料理へのマナーです。こうしたありふれた自発的行動をネガティブな単語で言い換えるならば、「アラサガシ」となるだけ。つまり、普段よりももっと「香味」の世界に意識を向けてもらえるのなら、現ロットの残念さを伝える意味も価値も充分にあると思っています。そもそも、残念という評価自体も作り手の実感に過ぎず、別の人間にとってはむしろ「好み」という可能性もある。
さて、そんな不安だったロゲン、めでたくも美味しく焼けたので販売させていただいました。
普段どうりに焼いたのではダメだということが分かると腕も鳴るわけで、粒の段階で様々なアプローチで香りを引き出す工夫をしました。まだ若干のもの足りなさを感じるているので次は製粉プロセスへの投資を決めました。今、作り手が何を感じているのかを共有すること、例え理解はされなくとも、どのような実感を持っているのかを伝えることは、作り手のプレッシャーにこそなれ、お客様にとってのデメリットにはならないはず。年内に間に合うか、来年になるのか分かりませんが、今後もしもロゲンの質が変わってきたら、そっと教えてください。きっと、とっても喜びます。
食べごろ・保存
メインツールのツイッターで保存には触れましたので割愛。食べごろは今晩から明日。それと劣化の早い夏にオススメのもう一つの食べごろがあります。それは今日中に冷凍してから、好きなときに自然解凍後。です。冷凍する事で水分が馴染みます。一般的には冷凍すると乾いてカサカサになって中身がボソボソしたパンになるというイメージ。それはベースのロゲンには通用しません。安心して冷凍(ラップで包んでからZIPロックに入れて)してください。