ベースベーカリーのブログ

2021年9月第1週

本日は雨空の中で並んでくださったにも関わらず行き渡わたらなかったお客様、誠に申し訳ございませんでした。また、買えたお客様においても、最後の数個を皆さんで半分づつに分けて下さり、改めてお礼を申し上げます。作り手の力不足でご不便をお掛けしておりますが、これに懲りずに足を運んで頂けたら大変励みになります。本当に有難うございました。

BIOディンケル、古代麦のフォルコン

先週に引き続き、同じ品種名の「ディンケル」有機古代麦100%で焼くフォルコンでした。しかし、全く同じ麦ではなく、生産者も地域も違います。もちろん、麦の個性も同じはずは無く、実際は見た目で見分けることができるほど、色味もサイズも異なりました。

初めて使う麦でどう仕込むかを考えた結果、できるだけ「いつも通り」を心がけました。なにせ麦の個性が分からないままの初仕込。常識的には試作を重ねて→合格品質に達してから→宣伝して→販売。という順番が堅実で親切、誠実で大人な態度だと思うのですが、今回もベース定番の「作り手とお客さんが同時に体験する」ライブなパン焼きでした。

実感として

ベースベーカリーにとっては潜在力の多い魅力的な麦。

多くのパン屋さんにとっては、暴れん坊で使いにくい麦。

感想としては、何度も使いたい。そして色々な可能性を模索しながら「この麦らしいパン」にたどり着きたい、そんな麦でした。具体的には酵素が非常に強い。これは品種や産地の違いというよりも、収穫年度や輸送のタイミング(温度環境)も関わってくる。製粉したてが最も粉の酵素が暴れているのですが、そんなことはベースベーカリーでは当たり前の日常です。全て挽きたてで仕込む、という表現の「たて」は、まだ粉がわずかに温かいくらいの出来立て。言葉通りです。

今回は、パンを膨らますグルテンが分解されて旨み成分であるアミノ酸等に置き換わった事で、爆発的な旨みが出ています。その結果として、別の言い方をすれば、その「代償」として、膨らむ機能を失っています。1週前のディンケルでは、加水による食感を得るために綺麗な形を手放しています。TVやレビューなどで耳にする食レポの薄っぺらいコメントで「小麦の甘さ」だとか「粉の甘さ」というのがありますが、大きく膨らますパンにある方がおかしいのです。そういったジャンルのパンを食べて感じる甘さは材料に加えられている砂糖などによる加糖に他ならず、もともと甘くもない麦と水と塩だけから「甘さ」を引き出すという事はなかなか技術の必要な大変な科学です。そして残念ながら何かを手放すということはセットとなる。

大きく膨らませるパンの作り手もプロですから、きっとその事実は知っています。だから失った旨みや甘さを加糖や調味料(アミノ酸等)で補うわけですが、その行為を「麦の甘さ」と評価してもらえるのだから、願っても無い幸運でしょう。そしてチーズ、ワイン、酒、納豆、味噌などなど、発酵と熟成の科学だけで甘さや旨みを引き出そうとしているプロは、他社より時間をかけて化学に向き合っているにもかかわらず、甘みが少ないとか、高いと言われてしまうわけです。こういうことを書くのは、決して「どっちが良い・悪い」を話したいからではありません。まずは食の事実と味の事実を知ってもらいたいという願いです。そして、その実際を体験してもらいたいという希望からです。

ピリカアマムの全小麦を始め、BIO古代小麦のような酵素の強い(生命力の強い)穀物と対峙する時、どうしても膨らますことより旨みを出すことを優先したくなるのは作り手のわがまま、と言うことは自覚しています。ですが、それは、なかなか出会えない穀物だからなのです。たとえば今回の古代麦でもっとパンを膨らますことは出来ます。でも、逆は不可能です。つまり、いくらでも手に入る小麦粉で、今回のような旨みを出すことは無理な事なのです。ならば、作り手としてはまず、「この麦でしか出来ないこと」に手をつけたくなる。そんな衝動から生まれたパン、そんな想いを感じてもらえたら、とっても嬉しいです。

今回、試験的に入荷した限られた量の麦ではありますが、次回はもっとパンらしい膨らみを持たせる「醸し」で焼いてみたいと考えています。

有機抹茶と大納言

今回は普段使っている丹波の黒豆を北海道産の「あずき」に変えました。よりマメの食感を残しつつ、茶の風味を上げています。抹茶はずっとほれ込んで使い続けている静岡県産有機抹茶、「岡部茶」です。ベースベーカリーの茶色い生地に捏ねて、さらに熟成期間を経て、さらに焼かれて尚も残るこの鮮やかな抹茶色、香り、上品な苦味は見事だと思います。ベースベーカリーの具材パンはいつも優良食材に支えられています。茶のチカラ強さに対して大納言小豆はもう少し変えても良さそうです。わずかに加糖を減らしてみても合うでしょう。ただ、捏ねるという作業の際に、マメがやわらかいと潰れてしまって「練りこまれて」しまう。このあたりのバランスは今後も探って行きたいと思っています。

アドリブ

BIOショコラ&BIOドライストロベリー

有機古代小麦100%、その酵母、塩、水、そしてフランス産のオーガニックハイカカコショコラとオーガニックドライストロベリー。

フォルコンと同じ酵素の強いディンケル麦を使いながら、こちらは丸い形がぎりぎり保たれたまま焼きあがっています。これはサイズが小さいという事が1つ。もう1つは大量の具材が骨格となって酵素分解した生地を支えてくれているということに起因しています。

前回から改良し、均等に練り込むことが難しいドライストロベリーを、今回は1個分づつ計量して焼く当日に生地に加えました。食感はしっかりと残り、香りも強く仕上がりました。パンの印象はこれだけで大分変わりました。

一方であらかじめ生地にストロベリーを混ぜ込んだまま熟成を取る前回までの手法より、香り、甘みの一体感は欠けている印象。でも、均等な具材配分という公平さは生まれた。さて、どっちが良いのか。

今回のテーマは「何かを得れば何かを手放す」ということかもしれません。作り手として、なるべく両方を得ようとする探究心は忘れたくないものですが、こと食品の世界においては、失ったものを補っているのは見渡す限り「食品添加物」だという現実も、忘れるべきではありません。

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