ディンケル・フォルコン・ブロート
ご挨拶 材料を入手したタイミングと工程の多さから、お休みの週にしか焼けないので、このタイミングに焼かせて頂きました。発酵が上手く進むかすらわからない、未知の領域にあるパンなので、予め告知が出来ませんでした。
仕込んでいた生地の様子から「よし!これならいける!」と感じて告知させていただたものの今週は本来「お休みの週」ということを想定して前回に多めに買ってくださっているお客様を裏切るのではないか、、、とも考えてしまい、難しい判断を強いられました。
当日、臨時営業。ふたを開けてみれば、待ってくださっているお客様の姿。とても嬉しかったです。本当にありがとうございました。
押し麦=フレークでパンをつくる
今回のパンはお知らせに書いたとおりの経緯で焼くこととなりました。以下、枠の中は「お知らせ」のコピーですので、既に読んでいる方は飛ばしてください。
お休みの週でしたが、焼くべきタイミングが訪れたので、土曜日に急遽焼かせて頂きます! パンは1種類のみ。 ディンケルフォルコンブロート 古代麦と呼ばれるディンケル(別名スペルト)だけで焼くフォルコンです。 ここまではベースベーカリーのパンとしては定番の範囲ですが大きな違いが一つあります。 それは、フレーク(押し麦)で作るという事です。全原材料表示はこうなります。 ・ディンケルのフレーク(押し麦)50% ・ディンケルの粒から製粉した粉 50% ・塩 もちろん100%BIOです。 非常に手間と時間がかかるため、普段のフォルコンと入れ替えることが出来ませんので、このパンだけのために時間をいただける「休みの週」に焼くこととなりました。 なぜこのパンを焼くことになったのか、長いストーリがあるのですが、公開できる範囲で短く紹介させて頂きます。 有機穀物特有の混ざり物(ほかの穀物)が多くて困っているという押し麦の存在を知り、ベースベーカリーが全量買い取りました。 味も質も期限もなにも問題ない素晴らしい食材ですが感謝価格で譲っていただけたので、お客様にはパンの価格へ正直に反映させていただきます。 「パンの周りに飾りでつける程度」の扱いが多い押し麦ですが、その飾りにオーガニックの稀少なディンケル古代麦をつかったところでその優れた個性は体験できません。 そのため、今回は実験と試作を兼ねて「押し麦で生地を作る」+「押し麦の香味を生地に反映させる」という、初の試みです。「わざわざ押し麦を使うから美味しい」というパンを目指して模索開始する、その第一回目のパン焼きです。 フレークを生地にする実験段階で、だいぶ在庫を消費しましたので、パンに出来る回数は多くありませんがあと5回分くらいあるかな?という印象です。(いつ焼けるかは分かりませんが、構想としては日曜日にこのパンだけを焼くことは可能な気がしています。) 先週、休業を想定してパンを多めに買ってくださったお客様には申し訳ない気持ちですが、事情をご理解頂けたら大変有り難いです。 では精一杯楽しみます!稀少な食材を楽しんでもらえたら光栄です。 |
シリアルなどで使われている、麦を押しつぶして乾燥させたもの=フレーク。
今回の目的はそれを使って「フレークの個性を活かしたパンを焼く」ということでした。押し麦はつぶされて乾燥しているため、穀物臭が強く、麦の性質も加工工程を経ているので玄麦(粒)とは全く違います。フレークは、一般的にはピーリングという外皮を取り除く工程を経て、白くなった麦を蒸気で加熱しながら押しつぶし、乾燥させることで製品化されているようですが、縁あって手にしたディンケルの押し麦は茶色い外皮が残っていました。
推測ではありますが、おそらく白い状態までピーリングできない、と言うことなのだろうと想像しています。つまり、大麦を加工する様にガリガリとピーリングすると、粒の中の白い部分が崩れてしまう。ディンケルの「粉」を作るのであればよいのですが、フレークにする場合は、崩すわけに行かない、ということだろうと思うのです。古代麦の特徴として、畑で育っている常態の一番外側の殻が非常に分厚く頑丈である分、その内側はとても繊細でもろい印象を持っています。ですから現代小麦を挽くのと、古代麦を挽くのとでは、ベースベーカリーでの製粉の仕方も速度も変えています。
フレークの香り、食感、保水の性質、これらの個性をパンに落とし込むためには、普段の「粉」のレシピは使えず、新しい発想と冒険が必須となり、同時にそれはとても自然な流れとなりました。パンとしては良くも悪くも「生地の半分がフレークから出来ているとは思えない」なめらかな仕上がりとなり、特に外皮はバタークッキーを思わせる甘く香ばしく仕上がりました。
今後、といってもあと数回のチャンスしか残されていませんが、もう少し生地に「フレークの食感」を残してみたらどうだろうか、と考えています。しかし、食感を残すということはフレークの形を残す必要があり、形が残るということは生地づくりの工程であまりコネられないということになります。となると、問題となるのは酵母としっかり触れ合えないということになる。つまり、フレークがしっかり発酵できない可能性が増えてきます。
焼きたいパンは「材料にフレークを使ったパン」ではなくて、「材料がフレークだから美味しいパン」です。と、言うは易し。。。しっかりと向き合えて、じっくりと楽しめる時間が見つけられたときに、2回目のパン焼きをしたいと思っています。
おねがい
今現在が梅雨真っ只中、と言うことがあり、常温で3日まで。特にパンの外側全面にフレークをつけているので、この部分の保水量が多くなります。部屋の湿気を吸う量が増えてしまうので、その分、カビが住みやすくなるのでご注意下さい。またパンの外皮が普段のフォルコンよりもフレーク分、分厚いので、カットの際は怪我せぬよう気をつけてください。トーストする際は外皮のフレークを少し湿らしてからがおすすめです。これをしない場合は、断面(パンの内側=クラム)がトーストされた時には(外皮=クラスト)が焦げがちになります。この香りも良いので、お好みで色々と調整しながら楽しんで頂けたら嬉しいです。