この週から2021年度のサマータイムを導入させていただきました。毎年恒例の8時開店です。週末の朝早くからのご来店、誠に有難うございました。パンの品質を守るためと、お客様を炎天下から少しでも遠ざけるための措置です。3時間も開店時刻が早まる事で様々な好都合と同時に不都合も出てくることと思いますが、どうか宜しくご理解の程、ご協力くださいませ。※サマータイム終了のタイミングは、毎年気温で決めています。
フォルコン
ローステッドライ麦を配合
今回は、ライ麦に関わる酸味、または由来の香りを「引き出さず」に、熟成のコクを「甘ったるく感じさせたくない」ためにライ麦を使いました。口に触れた瞬間に感じられる甘さ。断面から沸く強い穀物の香り、噛みこむ事で起き上がる魚粉のような香味。手ごたえとしては次に繋がるとても面白いパン体験でした。この季節、常温で寝かせることにリスクが伴うのが悔しいところですが、パンの完成は常温で3日後。と感じています。昨日の今日、一昨日の今日ではまだ皮と中身の調和が足りない、息の長いパンです。この息の長さと伸びしろの広さに大きく関与しているのは、作り手の技術でも経験でもなく、パンの大きさです。
今回は土日とも、すべてのフォルコンをLサイズにしています。大きく焼いた事でその分の価格が上がりましたが、日持ちと日を追うごとの味の伸びしろの幅を考慮すれば、作り手としてはこのサイズで焼き続けたいと思ってしまいます。しかしながら大きさはどうしても価格に関係するため、このあたりはお客様の声を聞きながらですね。ご意見、御感想、聞かせていただけると大変励みになります!
カシューカレンツ
今年2回目。1月以来焼いていなかった、通称:カシュカレ。
地球上のドライフルーツとナッツの組み合わせで、最も有名なパンといえば「くるみとレーズン」ではないでしょうか。ノアレザンとも呼ばれていますが、ベースベーカリーでの定番は、カシューナッツとカレンツ(山葡萄)なのです。食材の産地や品質は色々と変わったものの結果的に現在は100%BIOで長いこと落ち着いているという、「晩餐」以前から焼いているパンです。
そのカシュカレが今年に入って2回しか焼かれていない理由はドライフルーツとナッツのバリエーションが増えたからなのです。イチジクとクルミ、マスカットとアーモンド、などなど、様々な組み合わせで「ドライフルーツとナッツのパン」を焼いているので、「カシューナッツとカレンツ」の組み合わせの順番がなかなか来ない。
作り手にとっても本当に久しぶりで待望のカシュカレは、とても上手く焼けました。「上手く」というのは、作り手が想う「こうなって欲しいという思惑に近い」という意味においてですが、とにかく非常に旨みが強い。そういうパンにしたかったので成功ですが、問題があることも知っています。それは、旨みが強すぎて料理に合わせにくいということ。一食において、もしもパンが脇役ならば失格レベルに旨みが豊かです。たとえば、これとあうチーズを探そうとしたら中々難しいのではないでしょうか。
トースト?そのまま?なにかにつけて?色々と試してもらいたいパンですが、作り手自身はそのまま何も付けず&焼かず、ついつい食べ進めてしまっています。
「自分が食べたいパンを焼いているのだから自分が美味しく感じるのは当たり前だけれど、そんな我がままなパンを買ってくれる人たちがいるという有り難さ」本当に感謝しています。どうも有難うございます。
アドリブ=ショコラ&ラズベリー
高価で稀少な食材、ハイカカオのオーガニックチョコレートをパンにザクザク使うという、、、シリーズになるのでしょうか。このチョコの味に惚れてしまった様です。「チョコレート」というとお菓子のイメージであり、それで正解なのでしょうが、「ハイカカオ」となると印象がようやく変わってくる。具体的には「発酵」という工程を経た食品特有の香りと余韻に気づかせてくれるという事です。ベースベーカリーで使用しているチョコレートには香料や植物油脂が含まれておらず製菓用の硬化剤や光沢材も使用されていません。さらにカカオのパーセンテージが70を超えてくると、食品の印象がずいぶんと変わってくる。前回のショコラニブでたっぷりと、気づかされました。
そこで今回は「たくさん入れても甘ったるくならない」ことに気を良くして、もっとたくさん、ザクザクに、混ぜ込むのが大変なほど、入れました。ながく残り続ける発酵香を伴ったカカオの余韻を味わうには暑すぎる季節へのコーディネートとして、表面にはキュッと酸っぱい色鮮やかなラズベリーを振り飾りました。まるでケーキのような、いや、もしかしたらケーキよりもデシャバッたパンだったかもしれません。大きく口を開いてかぶりついて欲しかったので、最近のアドリブには珍しく大きめの丸型に成型しました。最も香りが豊かな購入日に食べきることをオススメしています。