1ヶ月間の工事休暇を経て、営業再開となった今週です。
窯断熱工事と石臼のメンテナンスに費やし、窯断熱は納得できる効果を得られました。パンへの熱の伝わり方も理論的には向上しているはずで、今後、その効果を体験できると期待しています。
一方で、石臼のメンテナンス(メタテ)は、工事自体は終りましたが、石に新たに刻んだメと親睦を深める努力を続けなければいけません。製粉の仕方、回転の速度、ふるいのタイミングや回数、選ぶメッシュの番手などなど、よりベターなシステムを見つけるまではまだまだ時間が必要で、今後の課題であり、期待しているからこそ楽しみたいところでもあります。
【お詫びとご挨拶】
今回は数十回に登る製粉実験を経て初めてパンにしましたが、挽いた粉には真新しさが残っており、一部に固めの小麦粉が混在しています。ふるいを掛けているので微細粉ではありますが、それでも食感を損ねる仕上がりとなってしまいました。力不足を心よりお詫び申し上げます。
この現象は徐々に弱まる予定で、ゼロに近づける努力を続けることをお約束いたしますが、残念なことに短期間でゼロに出来るものではなく、年をまたぎながら改善されていく見通しでございます。
本日も閉店後に石臼を解体して手入れを施しましたが、一度に大きく手を入れますと取り返しのつかない「行き過ぎ」が生じる可能性が高いので、少しずつの改善となります。心苦しいお願いではございますが、温かく見守って頂けましたら幸いです。より良いパンが焼けるよう、今後とも精進いたします。
フォルコン
普段よりも強い食感、弾力が感じられましたでしょうか。小麦の粒の中で一番外側の外皮の一部を僅かに間引いている事で引き出された食感です。石臼にとって最も負担の多い麦は、間違いなく現代の小麦であり、「現代品種」だと考えています。これに対して「古代麦」や「ライ麦」という昔ながらの麦は石臼にとって挽きやすい麦です。古代の製粉道具は石だったわけで、相性も良かったのだろうと想像しています。一方で現代品種は大量生産される食パンに特化して改良され続けており、大きく膨らむこと(グルテンが強く多い)が必須の条件の小麦です。そういう麦は硬質小麦と呼ばれていて、文字通りに非常に「硬」カタイので、石臼には大変な負担となるのです。負担と呼ぶよりも「無理がある」と言ったほうが正しいレベルです。
では、パン用小麦粉として流通している硬質小麦がどのように製粉されているかと申しますと、金属のロールで粉砕することで製粉されています。「金属VS硬い麦」もちろんこの戦いを制するのは金属です。なにも問題なく硬い小麦は細かいパウダーへ変身します。それを石臼でやろうというのだから無理がある訳ですが、無理をおしてでも手に入れたいメリットは2つだけ。それが「香り」と「鮮度」なのです。(パンのお話よりも製粉のお話に寄ってしまいましたので修正します)
【おすすめの食べ方】
今回のフォルコンは古代の道具である石臼で、現代でしか手に入らない微粉を目指したパンです。細かい粉からある程度粗い粉までを6種類に挽き分けて、そのうちの5種類のみをブレンドして使用しました。おすすめの食べ方としては表面がカリッとなるまでのトーストです。(強で3分以上必要です)お試しください。
ノアショコラ
ベースベーカリーの定番チョコパンである「パンオショコラ」とは違うパンを目指しました。パンオショコラが甘さを楽しめるパンであるのに対して、ノアショコラは食事に使えるパンとして焼きたかったのでショコラをハイカカオに変えました。甘さを控える代わりに量は多く入れて、オーガニックのハイカカオチョコレートという高価な食材の香りを存分に楽しめるように製法や焼き方に工夫を凝らしました。甘すぎないことでワインのお供にも好相性ですし、朝食にも合うと思います。トーストも香りが立っておすすめですが、チョコレートには硬化剤も入っておらず、油脂は有機カカオバター100%ですので、チョコが溶けてトースターを汚さぬよう、アルミホイルやベーキングシートなどの上でお試しください。
ファレスタ!(アドリブパン)
大きなオーガニックレーズンを入れ過ぎなほどに入れた蒸しパンです。これだけの量を入れた理由は発酵の過程で酵母菌に葡萄の果糖を食べてもらって、糖度を下げるという最終目標があったためです。生地の甘さを残し、葡萄の糖は減らし、酵母による香りと酸味を生地に添えたパンを目指しました。蒸し焼きにしながらも強く焼くことで、パンの外皮をガリッとさせて食感にコントラストをつけました。まるかじりでも、スライスでも、思い思いの食べ方で楽しんでもらいたいパンです。
ファレスタ!の由来
ファレスタという名前はイタリアのエミリア・ロマーニャのワイン醸造家が造るワインの名前です。いわゆるナチュールとしては手ごろな価格でありながら甘みと酸味のバランスが美しいオレンジ色の液体。寒くなってきたこの頃に、まだ冷たいワインを飲むのならば「ファレスタ」。そんな店主の思い付きから、彼らのワインへのオマージュとして、合わせたいパンを焼かせて頂きました。手元にファレスタがない事が悔やまれます。。。